PD
総合デザイン科 2・3年次 専門課程
プロダクトデザイン専攻
自動車、電気製品などの工業デザインから生活用品まで。
環境やコストなど、さまざまな制約を乗り越えるデザイン能力を養う
プロダクトデザインでは、携帯電話や文房具、自動車やキッチン用品など、量産されている、目に見えるものすべてが対象となります。人々はその製品を選び、使うことを通して、その人らしく暮らし、生きています。つまりプロダクトデザインには、人間の意識や哲学を変えることのできる力が秘められているといえます。そして、プロダクトデザイナーは、私たちが生きる社会に対して、あらゆる責任を負っているといっても過言ではないでしょう。どんな材料でつくるのか、どのように生産するのか。できあがった製品だけではなく、素材や加工方法など、例えば環境問題にも配慮する必要があります。
3年間の学習の流れ
カリキュラム詳細
2年次 演習、実習、講義の三本柱で基礎を身につける
授業の中心は「技術演習」「デザイン実習」「理論講義」。製図やスケッチ、モデリングなどの表現技術とともに、発想力や提案力を養います。後期の課題では、ドライヤーなど具体的なテーマが設定され、デザインにおける一連の過程を体験します。プロダクトの多くは立体物ですが、デザインの検討は、スケッチや図面など平面で行います。そのため2次元と3次元の垣根を自在に行き来する能力が求められます。
目標
具体的な条件が設定された課題を制作しながらデザインプロセス全体を経験し、2年次後半から始まる就職活動に対応できるようにする。
3年次 視野を広げ、課題を通じて発想力を鍛える
コスト、環境への配慮、クライアントの意見など、さまざまな制約のなかでの調整力と、細部への気配りが求められるプロダクトデザイナー。視野を広げ、発想力を鍛える課題が増えます。卒業制作では自らの関心に沿ったテーマを設定。担当講師がデザイン指導を行い、専任講師が全体の進行をサポートします。コンセプト決定、ラフモデル制作、最終作品の完成プレゼンテーションなど、社会に出る前の集大成を行います。
目標
卒業制作やプロダクトデザインに関する研究を深めながら、社会で活動するための準備を整える。実際に使われている高度な工学的技術にも触れる。
2024年度 2年次前期の時間割例
※時間割は2024年度の参考例です。
授業紹介
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2年次 プロダクトデザインⅡF
[機器・用品]UX(体験価値)をプロダクトデザインに具体化させる。
プロダクトデザインの基礎技術(製図、スケッチ、モデリング)を活用し、機器としての操作条件や構成要素、工業製品としての生産条件を満たしながら、製品にフォルムを与えます。授業では調査とディスカッションによって体験価値の発見と創出を行い、それらをもとに各々がコンセプトを立案し、制作したプロトタイプを提案します。
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2年次発想ワークショップⅡ
発想のトレーニングを重ねる
アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせといわれます。アイデア発想の原点は「観察」。授業では発想と創造のプロセスを、体感モデル(簡易的なプロトタイプモデル)の制作と検証で繰り返し、デザイン思考、分析的な手法で現状を把握し、問題の発見、解決、発想をデザインにつなげる技術を学びます。
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2年次プロダクトデザインⅡE
[生活用品]道具の制作で構造を理解する
素材の特徴を活かし、生活空間やライフスタイルと調和する生活用品のデザインに取り組みます。課題では与えられた制約の中で道具を制作します。前半で自分のアイデアや形の構造を理解し、実寸のプロトタイプ制作から強度のある設計を導きます。後半は、それらを美しいデザイン提案に仕立てていきます。
卒業後の進路
プロダクトデザイナー(自動車/生活用品/雑貨/玩具等)、モデラーなど
主な求人
自動車、生活用品、雑貨、玩具などのプロダクトデザイナーやモデラーの求人が数多くあります。他分野と比較して、企業からの求人が多く見られます。
就職先
産学連携記事
【校外実習】アッシュコンセプト 名児耶 秀美 先生
2023年10月31日(火)にアッシュコンセプトにて、昼間部3年生プロダクトデザイン専攻の金山元太ゼミで、校外実習が行われました。前半は代表取締役の名児耶 秀美 (なごや ひでよし)先生に講義していただきました。
KUWASAWA DESIGN SCHOOL PRODUCT DESIGN
学生生活の集大成となる卒業制作のインタビューを通して、それぞれの学生の授業への取り組みや学習の効果などについて紹介しています。
昼間部・夜間部をそれぞれ別けて掲載しています。
本校のプロダクトデザイン分野について分かりやすい冊子となっていますので、プロダクトデザイン専攻にご興味のある方はご覧になってみてください。
よくある質問
桑沢のプロダクトデザイン専攻ではどのようなことが学べますか?
■プロダクトデザインについて
私たちは朝起きて夜寝るまでの間に様々な道具に触れ、生活しています。歯ブラシ、携帯電話、ペンや机や椅子、キッチン器具、自転車や電車や自動車、公園遊具やスポーツ用具・・・
プロダクトデザインは暮らしの中の様々なことに対し、モノ(道具)を通して魅力や楽しさ、豊かさを提供して社会にコミットする仕事です。必ず誰かがデザインしているこれらのモノすべてのデザインに携わるチャンスがあります。
まだ世の中に存在しないモノを生み出して、新しいコトを創るのもプロダクトデザインの魅力です。
■UX
「UX=ユーザーエクスペリエンス」
いまデザインの世界で特に重要になっているのが、UXです。私達を取り巻く環境・社会ではたくさんの物事が動いています。モノゴト=モノとコトです。
プロダクトデザインとは概ね人が使うモノ(道具)のデザインを担いますが、求められているのは道具の機能や性能ではなく、それによって得られる効果や価値の「共感」です。
「このモノ」で「どんなコトが経験できるか」使う人の体験、ユーザーエクスペリエンスです。そして、そこから得られる効果や価値への「共感」、つまり感覚や感情というココロです。
UXが体現されたモノやコトでココロが動くのは、ヒトがそれらとコミュニケーションをとっているからです。
あらゆる分野や地域で新しい価値によるデザインが求められるようになっています。UXによる新しい経験価値の提供のためには、システムが社会に実装され、スムーズに稼働しなければなりません。
それを支えるのが「道具」です。人が使う「道具」は、人間を中心において使いやすく信頼して使えるモノでなければなりません。モノからコトへ、そしてココロへ。プロダクトデザインはモノにとどまらないデザインの領域となっています。
■プロダクトデザイナーについて
3Dアプリケーションや3Dプリンターの一般化によって、ものづくりのコモディティ化が加速しています。しかしながら、これらが使えることがプロダクトデザイナーの職能ではありません。立体を作るのが好きで得意というだけではデザイナーとはいえません。
デザインを職能として自身の職業にする場合、自分のために自分で作る訳ではないので、たくさんの人たちと共に作業を進めていく協調性や声を聞く力、それらをまとめる力も重要です。モノを世の中に送り出すためには、デザイナーのような考える人や、実際に使う人の他に、作る人や売る人、そのために資金を出す人など様々な人達の理解や協力を得ることも必要です。買う人や使う人にはこのモノでどんなコトができてどんな魅力があるのか、お店やバイヤーに対しては何が特徴なのか、さらには生産するメーカーや工場には製造のための情報や方針を伝えなければなりません。なぜこれを作るのかという「価値」を伝えていきます。
とりわけ、道具によって世の中の問題や課題に対する最適解を示すのがプロダクトデザイナーの存在意義です。
■プロダクトデザインのスキルについて
プロダクトデザインは「モノ」を通して「コト・ココロ」を快適に豊かにしていきます。道具を通して人生の価値を高めていく仕事です。そのためのモノやデザインの在り方、考え方、作り方を学びます。
まだ、世の中に存在しないモノを具現化する。そのために必要なスキルをまず身につけましょう。
「観察」 主観を持たず、ありのままを見ることで、違和感の正体“なぜ”が生まれます。
「仮説」 “なぜ”に対して“だから”を考え、“だから”に対してと“ならば”を見つけます。
「表現」 スケッチは、プランのアイデアやイメージを視覚的にわかりやすく伝えます。
「製図」 図面は作るモノの形や意図を正確に伝える、ものづくりの世界共通の言語です。
「造形」 フォルム・素材・色などで機能や意図を表現して、道具に価値を与えます。
「提案」 “ならば”をいくつもあげて具体化していきます。解決案の提示です。
「言葉」 理解する能力と伝える能力の基本は言葉です。説明には文章力も必要です。
「思考」 物事の本質を掴むための洞察力と論理的思考がデザインの精度を高めます。
「検証」 解決案“ならば”を試して、具体的な最適解“なる”に仕立てます。
「還元」 検証結果を反映させて、“なる”をより「良くなる」に導きます。
プロダクトデザイン専攻では、カリキュラムを通してこのようなスキルを体得しながら
私達の暮らしの中に存在する道具との関係性からデザインの在り方、考え方を学びます。
昼間部・夜間部で違いはありますか?
昼間部の特徴は、1年目と3年目にあります。1年目は全分野や領域に共通する構成や造形を主としたデザインの基礎を学びます。昼間部の学生はほぼ同世代(18歳~22歳)ですが、様々なデザイン分野や領域を目指しています。このような仲間と共に、お互いの領域を体験したうえで2年目以降に自ら目指す専門領域を2年間で学びます。3年次には少人数クラスのゼミで集大成となる卒業制作にも臨みます。
夜間部の良いところは、年齢や職歴、価値観が異なる多様な仲間と一緒に1年目から専門領域を学ぶことです。通いやすいカリキュラムとして必ず登校しなければいけない日を週3日とし、その分、多様なバックグラウンドを持つ人たちと刺激を受け合いながら、自ら主体的に課題に取り組んでもらう時間を増やしています。
ここで培った経験は、それぞれのバックグラウンドと融合して他者にないデザインの武器として活かされていくでしょう。
昼間部2年次進級後の2年間と夜間部の2年間で取り組む課題数と密度はほぼ同じです。
(昼間部には専攻科目の他に共通科目や合同授業などがあります)
昼間部と夜間部で就職の有利不利はありませんが、就職活動の時期に違いがあります。
就職活動のピークは卒業年度の1年前に訪れます。つまり昼間部では2年生のときに、夜間部では1年生ですぐに就職活動に臨むことになります。
課題量はどのくらいですか?
主に技術実習とデザイン演習で制作課題がありますが、これらの授業時間は教員による制作進行の確認と取り組みに対するアドバイスが主となります。1科目あたり1~2課題あり、授業で教員としっかりとコミニュケーションを取るためには、各々が授業時間外に制作を進める必要があります。
プロダクト分野はどんな形態の仕事がありますか?
プロダクトデザインでは、卒業後すぐにフリーランスとして仕事を受けたり起業するのは難しいです。まずは「デザイナー」としての就職をキャリアスタートの目標とします。デザイン事務所への就職実績もたくさんありますが、業界企業への就職(インハウスデザイナー)からのキャリアスタートを勧めています。
・プロダクトデザインにおけるデザイン事務所の特徴
「デザインサービス業」なので「製品・商品」づくり業の中の「デザイン」に特化して担う、職人に近い働き方です。ただ、一つの事務所でも携わるデザイン領域は多岐にわたり、業界企業に比べてはるかに多種多様です。
・業界企業の特徴
対象となるユーザーがいる特定の市場に「製品・商品」を提供する「製造販売業」なので、一つの企業で携わるデザイン領域はやや狭くなります。そのかわり、「製品・商品」づくり(企画からデザイン、製造、流通、販売まで)の仕事の流れすべてが見通せる働き方になります。
フリーランスや起業を目指す方も、プロダクトデザインでは上記のいずれかを経験してからとなるでしょう。
必要なソフト、コンピュータなどありますか?
デスクトップ型のコンピューターとノート型またはタブレット型のコンピューターを併用するのが望ましいですが、いずれかであれば、ノート型またはタブレット型のコンピューターをまずは購入しましょう。併せてモニターとキーボードを揃えれば、自宅ではデスクトップ型のように使用できます。
OSはWindowsOSでもMacOSでも構いませんが、プロダクトデザイン領域ではWindowsOSのコンピューターのほうが工作機器やアプリケーションとの親和性が高いでしょう。
特にWindowsOSのコンピューターを購入する場合には、必ずクリエイティブ業務対応の「ワークステーション」を購入してください。2D・3D・映像などを扱うアプリケーションはワークステーションでなければ動きません。
使用するアプリケーションはサブスクリプション購入が主流です。学生の間はエデュケーション(学生版)で割安に使用できる場合がほとんどです。
2D系:AdobeCC
3D系:Autodesk・SolidWorks・ライノセラス など
レンダリング動画系:KeyShot・シネマ4D など
3Dプリンターがあれば試作検証が自宅で素早く行えます。
技術更新が早いので、安価なエントリーモデルを2~3年で買い替えたほうが良いです。 3~5万円程度のFDM式3Dプリンターで十分です。
必要な機材については、下記よりご参照ください。
プロダクトデザインとは?
【特徴】
活躍できる領域(業種・業界)の幅が広がっています。
プロダクトデザインやプロダクトデザイナーの領域は、多くの方がイメージしている「モノ」のデザインにとどまりません。プロダクトデザインが対象としているのは、まずは、機能を持った「モノ」=道具のデザインです。ここで言う「道具」は人が使うものを原則として、この道具が沢山の人に使用してもらえるように同じ品質で量産する、つまり「製品」に仕立てます。「製品」こそ英語で「プロダクト」です。製品(道具)は使う人に様々なベネフィット(恩恵)を提供します。良い効果、つまり良い体験をしてほしいので、その魅力や使い勝手の良さを製品(道具)の機能や形に反映させていきます。
これがプロダクトデザインです。
そして、近年ではいわゆるプロダクツは実体のある製品だけではなく、例えばIoTの浸透でゲームやアプリ、WEB、SNSを使った様々なサービスのこともプロダクツと捉えます。皆さんの身の回りのさまざまなものやサービスの使い勝手や体験価値のデザインといえます。これをユーザーインターフェースデザイン(UI)とかユーザーエクスペリエンスデザイン(UX)と言いますが、これらの領域の多くをプロダクトデザインの知見を持った方が携わっています。
良い体験の魅力をモノに反映させるための印象のデザインとして、CMF(カラー:色・マテリアル:素材・フィニッシュ:仕上げ)開発もプロダクトデザイナーの領域です。
プラスチックをはじめ、布や石、金属、ガラスなどさまざまな素材の色や肌触りなどの質感表現のことで、手が触れるあらゆる素材のデザインを行います。
このようにプロダクトデザインは 人間を中心においたコミュニケーションや体験価値をモノやサービスに体現する領域と捉えることができます。
プロダクトデザインと自身の親和性について
こんな方は、製品デザインや商品デザインを担う、プロダクトデザインで力を発揮できます
・「作品」を作るより「製品・商品」を作りたい。
・「表現技術」の鍛錬より、「協業技術」を身につけたい。
・一人で考える・自分でつくるより、みんなで考える・作り上げるのも好き。
・「絵や作品作り」の他に、興味や趣味がある。
それから
・モノやヒトに興味がある。
・身の回りのモノがどのように作られているのか知りたい。
・新しいライフスタイルを作りたい。
も良いです。
70年の歴史と伝統を持ち都心に立地し続けてきた桑沢デザイン研究所では、有名な企業などの第一線で活躍するインハウスデザイナーも多く非常勤教員として教鞭をとっています。実践の現場に身を置く現役のデザイナーによる数多くの演習授業は、他校では得ることのできない貴重な経験となるでしょう。
特に桑沢デザイン研究所の専攻デザイン科(夜間部)は、いわゆるスクールやセミナーとは異なる専修学校プログラムで、夜間の専門学校でプロダクトデザインを学ぶ場合、関東一円では唯一の選択肢です。
週3回の夜間コースとはいえ、二年間は生活のプライオリティをデザインを学ぶ学生であることを第一義に置くことで、学習効果が高まるものと考えます。
特徴の異なる昼間部夜間部それぞれの学生同士の交流と融合もまた他校にはない人間関係を築くことでしょう。
学生作品ギャラリー
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卒業生インタビュー
クライアントの想いをヒアリングし、デザインアイデアを考えていきます。