基礎デザイン
専攻
「レクチャー&ワークショップ」と
制作プロセスを体験する「プロジェクト」で、
「手を動かしながら考える・作りながら学ぶ」
に取り組みます。
デザインという具体的なカタチを実現するためには、もちろん造形能力が欠かせません。これについては基礎造形専攻で学ぶことができます。ただし、それに加えてデザインが価値を認められる提案や興味深い問いかけであるためには、実際にデザインの制作と利用にかかわる産業や技術、メディアや文化など、生きた社会についての知識や教養が必要です。また衣食住やコミュニケーションなど、多様な領域にわたるデザイン制作のプロセスを、できるだけ幅広く体験しておくのが理想的です。
基礎デザイン専攻は、これまでのデザイン教育の経験に基づいて、「レクチャー&ワークショップ」では主にデザインの基礎力の育成をめざして、社会や時代の変化を視野に入れつつ、暮らしを支えてきたデザインを再発見し、今後のデザインの可能性を探る機会をつくります。また「プロジェクト」では主にデザインの総合力を育むために「つかむ、つつむ、つたえる、あそぶ」という4つの行為や活動に焦点をあてて、それを実現するための具体的なカタチを探る過程を体験する機会をつくります。
curriculum
カリキュラム
火・金 18:30-21:10[1年制/定員40名]
カリキュラム
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前期[15週]
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プロジェクト
「つかむ」をデザインする
「つつむ」をデザインする
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レクチャー&ワークショップ
〈リサーチ・プロトタイピング・プレゼンテーション〉の基礎
デザイン史
メディア史
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後期[15週]
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プロジェクト
「つたえる」をデザインする
「あそぶ」をデザインする
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レクチャー&ワークショップ
デザイン論
ゲスト講師によるレクチャー
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レクチャー&
ワークショップ
LECTURE & WORKSHOP
考え方や簡単な技能を学ぶ
前期では主にデザイン史やメディア史を活用しながら、現代だけに限定されない、いろんなカタチを視野に入れていきます。後期は独自の問題関心やテーマをもつデザイナーの話を聴くことで、デザインという取り組みの拡がりや可能性を共に考えます。こうした学習を通じて、私たちの身の周りに存在するものが、デザインという創造(企画・制作)のプロセスを経た結果として目に留まる機会をつくりたいと思っています。
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LECTURE & WORKSHOP1
デザイン・プロセス*の基礎
「プロジェクト」を体験するための準備として、
最低限必要な知識の共有をはかる。デザインはリサーチ→プロトタイピング→プレゼンテーションというプロセスを経て、最終的に社会へ向けた提案として生み出されます。金曜日の科目「プロジェクト」では「つかむ」「つつむ」「つたえる」「あそぶ」という4つの課題に取り組みながらデザイン・プロセスについて学びますが、火曜日の「レクチャー&ワークショップ」でははじめに必要な知識を共有するために、デッサン、素材、観察と調査(リサーチ)、提示と検証(プレゼンテーション)について、あらかじめ学習する機会を用意しています。
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LECTURE & WORKSHOP2
デザインされたものの再発見
デザイン史・メディア史を活用して、
多様な〈かたちの与え方〉を広く視野に入れる。次にこの科目では、デザイン史やメディア史を活用しながら、私たちの身の周りにある「デザインされたもの」について再発見する機会をつくります。私たちはいまここで暮らしているために身の周りにあるかたちに馴染んでいますが、地域・時期によってさまざまな色・形・素材の組み合わせ方や多様な使い方があることを知れば、デザインされたものが、そのような選択肢の拡がりのなかのひとつとしてとらえられるようになるでしょう。このような学習体験は、現在のかたちのバリエーションを超えて、それぞれに新たなかたちを構想していくことにもつながっていきます。
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LECTURE & WORKSHOP3
デザインすることの可能性
新たな領域を開拓してきたデザイナーの経験から、デザインの可能性の拡がりを学ぶ。
さらに後期のこの科目では、独自のテーマや問題関心に基づいて、新たな領域を開拓してきた本校に縁のあるデザイナーをお呼びして、ご自身の仕事や事業の経験とそこから得られた知見を共有するために、ときに手を動かしながら、じっくりとお話を伺います。デザインならではのものの見方や感じ方をさまざまな領域で活用しようと思っている方にも、プロのデザイナーを目指す方にも、「デザイナーはこういう仕事」という同時代の社会通念や固定概念に対して、一度、距離をとりながら、今後「デザインすること」の可能性について考える機会をつくりたいと考えています。
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*デザイン・プロセス:
リサーチ(観察する)~プロトタイピング(試作する)~
プレゼンテーション(提案する)
プロジェクトPROJECT
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リサーチ
1観察解釈 -
プロトタイピング
2発想試作 -
プレゼンテーション
3提案検証
「つかむ」「つつむ」「つたえる」「あそぶ」の
4つのテーマの課題を通してデザインの流れを学ぶ
プロダクト、スペース、ファッション、ビジュアルという、主要なデザイン領域の企画・制作のプロセスを体験します。これらは専門技術こそ異なってはいるものの、〈リサーチ (調査・観察) ~プロトタイピング (発想・試作) ~ プレゼンテーション(提示・検証)〉という、同じプロセスにしたがっています。一年間を通じて「つかむ」「つつむ」「つたえる」「あそぶ」という四つの課題に取り組むことで、手を動かしながら総合的にデザインを学んでいきます。
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PROJECT1
「つかむ」をデザインする
プロダクトデザイン
ハンドルがあるからこそ、私たちの身体と道具が結びつき、行為から機能が生まれます。そこに適切な〈配慮(デザイン)〉が施されたとき、道具には〈使いやすさ〉が備わり、私たちは〈使うよろこび〉を感じます。それぞれの道具にとって、どのような〈配慮〉がふさわしいか、「手を動かしながら考える、作りながら学ぶ」というデザインの原点に立ち返って考えます。
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PROJECT2
「つつむ」をデザインする
スペースデザイン+ファッションデザイン
紙や布に切り込みを入れたり、折ったり、曲げたり、結んだり、吊り下げたり、立たせたりしながら、面の立体造形を研究します。この面の立体で〈光をつつむ〉とランプシェードという機能が、また〈身体をつつむ〉とドレスという機能が現れます。光や身体とかかわることで、造形はいっそう複雑な表情を備え、ダイナミックな動きへと展開していきます。
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PROJECT3
「つたえる」をデザインする
ビジュアルデザイン
企業や地域の特徴をくっきりと親しみやすく表現したロゴマークを目にすることがあるでしょう。そのすっきりとした見栄えとは裏腹に、これらは周到な準備や多くの試行錯誤、そして考え抜かれた判断を経て世に出たものです。対象をさまざまな視点からリサーチして「〜らしさ」を探り出し、これを色や形に置き換えていきます。上手い下手よりも造形と伝達内容との一致が重要です。たくさんのラフスケッチをつきあわせながら、「伝わるデザイン」や「目的に沿ったデザイン」について考えます。
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PROJECT4
「あそぶ」をデザインする
総合デザイン
〈あそび〉は人間の生活に欠かせない要素であり、デザインの重要な対象です。このプロジェクトではゲームのデザインを通して〈あそび〉について考えます。チームを組み、実際の製品開発に近い方法でプロジェクトを進めます。市場や既存商品を研究しながら作りたいものを見極め、ゲームの本体からマニュアルまで総合的にデザインします。設定や規則に従いつつ、予想のつかない展開を楽しみ、たとえピンチになっても打開を試みる。まるでゲームのようにプロジェクトを楽しみましょう。
受講生の声VOICE
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岡本真拓設計職モノづくりに興味があり、これまで大学院では設計工学の研究を、仕事ではエンジニアとして設計業務を行ってきました。工学的な設計もデザインも、人が何かを創造するという観点では共通する部分や違いを互いに活かせるのではないか、と考えたのが受講のきっかけです。授業では、デザインを行う対象を系統的に理解し構成するだけでなく、主観を大切にしながら対象を観察し発想することを繰り返し実践しました。対象を普段とは異なる文脈で捉え直し、手を動かして多様な可能性を探索することは、デザインのみならずあらゆる活動に活用しうる取り組み方だと感じました。
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片野坂桃子夜間附帯教育修了後、専攻デザイン科 ファッションデザイン専攻へ進学私は高校を卒業してすぐ入学したので、社会人経験のあるクラスメイトの、作品との向き合い方やチーム内での言動など、何から何まで勉強になることばかりでした。特に、企画からロゴデザインまでをチームでプロデュースする授業が思い出に残っています。夜中まで続くチームでの真剣な話し合いも、最終的にそれらを踏まえたデザインをしていくことも楽しかったです。チームでデザインする楽しさも難しさも学べた、達成感のある授業でした。たくさんの尊敬できるクラスメイトと出会えて1年間一緒に勉強できたことを幸運に思います。
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加藤綾販促品グッズ制作会社 デザイナーデザイン職として働いてきましたが、改めて基礎から学び直し、スキルアップできる場所を探していました。授業では、「デザインとは課題をみつけること」「観察すること」「手を動かして考えること」をレクチャーされ、デザインとは何か?を広く体系的に体験した一年だったと感じています。世代や業種は様々でも、”デザインに興味がある”を共有できる人々が集まる貴重な時間でした。特に若い人のサステナビリティへの意識や、デジタルスキルの高さが印象的です。それぞれ「デザイン」へのアプローチの違いがあり、良い刺激となりました。個性豊かな先生方から教わることも多く、『心豊かになる』を実感した一年です。
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瀬頭絵真会社員・マーケティング部大学時代から 「デザイン」 に興味を持っており、部屋にこもってデザインの本を読むだけではなく、自分の手を動かして理解する場所を求めて桑沢の扉を叩きました。課題では、チームメンバーとフィールドワークをしながらアイデアの方向性を探ったり、作業に熱中するあまり気がついたら朝だったり。全ての授業において 「手を動かすうちに自分の考えができあがっていく」 というプロセスにのめり込むことができました。入学式で先生がおっしゃっていた 「この世界は選ばれたものでできている」 という言葉が記憶に残っていて、その言葉を通して、日常の身の周りの景色も少しずつ変わって見えるようになりました。
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丹後谷颯季接客業(レストラン勤務)就職した後も学び直したいと考えていたところ、自分にはセンスがないからと何となく遠くに感じていたデザインの分野に挑戦することにしました。どの内容も新鮮でしたが、映像作品の一つの場面を言葉で整理する授業では、その行為自体がデザインに必要な観察力を身に付けることに繋がっていることを知りました。また、ご活躍されている現役の方のお話を聞き、デザインされたものがどのようなプロセスで成り立っているのか、最終形態に辿り着くまでのアプローチ方法を学ばせてもらい大変充実した時間でした。
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伊藤凜々子夜間附帯教育修了後、専攻デザイン科 ビジュアルデザイン専攻へ進学各分野の先生方の多角的な視点と、多様なバックグラウンドを持つクラスメイトが生み出す作品にふれ合いながら、どこか自分自身が形成されていくような感覚もありとても有意義でした。デザインとはただの専門領域ではなく人間の話でもあると思うし、桑沢はそういう教育をしてくれる場所だと個人的には感じています。基礎デザイン専攻はそういった意味でも、より多くの方々に開かれた講座であると思います。
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星野優美航空関係事務職これまでデザインについて学んだことのなかった私にとって、基礎デザイン専攻で学んだ1年間はとても多くの収穫があり、毎週が刺激的でした。実際に手を動かしながら制作過程を体験したり、各分野で活躍されているデザイナーの方々などから直接お話を聞けたことで、遠い存在だと思っていたデザインがより身近なものになりました。各分野の基礎を広く学べるので、これからデザインを学び始めたいという方に特におすすめしたいです。
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渡辺拓実大学院生自分の中での「デザイン」というものの輪郭が、ぼやけながらも徐々に定まっていく感覚を味わうことができ、自分の中でのデザインという営みの解像度が上がりました。基礎デザイン専攻で、VD・PD・SD・FDのそれぞれのデザインプロセスを学ぶ中で、それぞれのデザインが少しずつ形を帯びていきました。目で観て、手を動かし、それを口で伝えることにしっかりと向き合うことができる場であったように感じます。
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蓑島麻衣デザイナー独学でデザイナーとして働いてきたのでデザインを教育として学んでみたいという思いが受講のきっかけでした。デザインの疑問や漠然として不安だったところを授業内容がぴったり埋めてくれる感覚があり毎回の授業がとても楽しみでした。デザインに前向きな受講生や熱心で丁寧に「教える」ことをしてくださる先生方との交流は支えにもなり、目標にもなりました。自分の苦手なことがわかると強みも認識することができます。これまで自分がしてきたことと次の可能性を繋ぐことができる授業だと思います。
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藤井 大地方公務員受講のきっかけは、仕事をしながら短期間で、デザインの基本を学びたいと思っていたからです。授業では、様々な分野のデザインとそのプロセスを学ぶことによって、デザインそのものの理解を深めることができました。そのうえで、デザインという手段によって「自分は何がしたいのか」を常に考えさせられる1年間でもありました。私のように普段デザインと縁遠い環境にある方こそ、基礎デザイン専攻で学ぶことで、仕事や生活をよりよいものに変えていく力がつくと思います。